地区センターで、味噌作り体験があるらしい。
妻が見つけて応募してくれました。
結構な応募数があったそうなのですが、運良く当選。
当時の僕らは、いずれ海外に行きたいという気持ちがありました。
海外に行っても味噌を自分で作れたらいいよね、と妻が言い出したのです。
なるほど。
味噌を作れるようになる暮らし。
なんだか良い。
そんな流れで、地区センターの味噌作り体験へ行ってきました。
2015年の記録ですが、手で大豆をつぶして、麹と塩を混ぜて、容器に詰めて、あとは発酵を待つ。
やっていることは地味です。
でも、手のひらに残る大豆のやわらかさや、麹の匂いが妙に記憶に残っています。
味噌作りは、良い菌を家に増やす作業らしい

味噌作り体験ということで、材料はすでに用意されていました。
茹で大豆が1kg。
麹が1kg。
塩が380g。
豆を洗うところ、煮るところ、麹を作るところは、今回は省略。
地区センターの体験なので、いちばん楽しいところから始められるわけです。

作り方の資料もいただきました。

始まる前に、講師の方が話してくれたことが面白かったのです。
「味噌作りは、良い菌を家に増やす作業なんです」
たしか、そんな話でした。
味噌は麹菌が作り出す酵素によって発酵・熟成していく。
その菌は、家の中にも、手のひらにもいる。
酒蔵に蔵付き酵母があるように、家にもその家の菌がある。
だから、同じ容器で毎年仕込んでいくと、その家の味噌になっていく。
そんな話を聞いて、手前味噌という言葉が急に体感に近づいた気がしました。
買ってくる味噌ではなく、家で育っていく味噌。
これ、ちょっと面白い。
麹に塩を混ぜる。まずは塩きりから

最初は、麹に塩を混ぜる作業です。
用意されていた塩の9割ほどを袋に入れ、麹と均一に混ぜていきます。
残りの塩はあとで使うので取っておきます。

袋越しに混ぜるだけなのですが、麹の粒がぱらぱらと動く感じが手に伝わってきます。
この時点ではまだ、味噌というより材料。
でも、塩と麹が混ざっていくと、少しだけ発酵食を作っている感じが出てきます。
地味。
でも楽しい。
茹で大豆を袋の上からつぶしていく
次は茹で大豆。

厚めのビニール袋に入った茹で大豆を、袋の上から手でつぶしていきます。
これが思ったより気持ちいい。
豆はやわらかいのですが、全部を均一につぶすのは意外と大変です。
指の腹や手のひらを使って、ぐいぐい押していきます。
ぷちぷち。
むにゅ。
そんな感触。
料理というより、少し粘土遊びに近いかもしれません。
ある程度つぶれたところで、先ほどの麹を入れます。

大豆と麹を混ぜながら、さらに手でつぶしていく。
固すぎる場合は、大豆の煮汁を少し入れて調整するそうです。
こういうところは、きっちりしたレシピというより、手の感覚なんですね。
まだ粗いかな。
もう少しつぶすかな。
そんな感じで、手元を見ながら進めていきます。
味噌玉を作って、容器にぎゅっと詰める
大豆と麹が混ざったら、空気を抜きながら丸めます。

大きめのおむすびのような味噌玉。
これを容器に投げ入れるようにして、ぎゅっと詰めていきます。
空気が入るとカビが出やすくなるので、できるだけ空気を抜く。

手で押し込むと、味噌になる前の大豆と麹が容器の中で平らになっていきます。
ここまでくると、かなり味噌っぽい見た目です。
でも、まだ食べられるわけではありません。
ここから待つ。
これが発酵食の面白いところですね。
自分でできる作業は、途中まで。
あとは菌と時間に任せる。
クッキングシートで覆って、あとは発酵を待つ
最後に、仕込んだ味噌の上へクッキングシートを置きます。

ふちを味噌にぐっと押し込んで、表面を覆う。
カビ防止のために、取っておいた塩をふちへ振ります。
これで仕込みは完了。
密封はしないそうです。
空気がまったく入らないと発酵が進みにくい。
でも、虫は入ってほしくない。
なので、今回はビニール袋に包んで保存する形でした。
なんというか、発酵ってちょうどいい隙間を作る作業なのかもしれません。
閉じすぎない。
開けっぱなしにもしない。
雑に見えて、ちゃんと理由がある。
味噌を仕込むと、台所の時間が少し長くなる
この日、講師の方が作った野菜の即売会もありました。
ルッコラを買って帰って食べたのですが、これがかなり味の濃いルッコラでした。
葉っぱなのに、しっかり主張がある。
土や菌の話を聞いたあとだったので、余計に印象に残ったのかもしれません。
味噌も野菜も、目に見えないところで時間が動いている。
そんなことを考えながら帰った記憶があります。
その後、自分の暮らしでも庭や保存食に手を出すようになりました。
梅を漬けたり、柚子胡椒を作ったり、レイズドベッドを作ったり。
たぶん、こういう体験が少しずつ積み重なっているんですよね。
庭の梅で梅干しを作ったときも、待つ時間が楽しかったです。

柚子胡椒を作ったときは、大量消費のつもりが主役になりました。

味噌作りも同じで、手順だけを見ると難しいことは多くありません。
ただ、手でつぶして、混ぜて、詰めて、待つ。
その待つ時間が、暮らしの中に小さく残る。
これが良い。
また仕込みたい。できれば同じ容器で
毎年同じ容器を使うと、良い味噌ができるようになる。
講師の方のその話が、今でも妙に好きです。
容器にも、家にも、手にも、その家の菌がついていく。
それが毎年の味噌になっていく。
なんだかいい話です。
買った味噌は、すぐ使えて便利。
それはそれでありがたい。
でも、自分で仕込んで、しばらく待って、ふたを開ける味噌には別の楽しさがあります。
うまくいくかどうか、少し不安。
カビないかな、と気になる。
でも、それも含めて発酵。
まあ、そういうところも含めて暮らしですね。
また仕込みたいです。
できれば、同じ容器で。