辿り着けるかは五分五分…6年ぶりの新島へ、荒天の中さるびあ丸に乗る

辿り着けるかは五分五分…6年ぶりの新島へ、荒天の中さるびあ丸に乗る 新島釣行

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6年ぶりに新島へ。

前回新島へ行ったのは、コロナ禍が本格化する直前。
1週間ほど釣りキャンプをして、島を離れる頃には「また来よう」と自然に思っていました。

それなのに、気がつけば6年。
行きたい気持ちはずっとあったのに、コロナが収まっても、仕事やらなんやで都合をつけては延期して、あっという間に時間だけが過ぎてしまいました。

今回も目的は、一応、釣りキャンプ。
キャンプをして、釣りをして、釣った魚を食べる。そんな時間を新島で過ごしたい。

ただ、6年も空くと、気持ちが若干変わりまして。
キャンプや釣りだけでなく、島で過ごす時間そのものに目を向けてもいいのかもしれないな、と。そんなことを考えながら、友人のヤカンと新島行きの予定を組んでいたのでした。

前々から仕事の都合をつけて、準備を進めて、いよいよ後は新島に行くだけ。

ところが……。
出発当日になってその空気が一変します。

行くのか、やめるのか。出発直前のざわつき

始まりはヤカンとの電話。

仕事に忙殺されていた最中、非日常を求めてふと頭に浮かんだのが新島。
単独で行くことを以前に計画したものの踏み出せなかったこともあり、ヤカンに相談してみることに。

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6年前のように……と話してみると、その電話で新島行きが即決定。
この時点で1月末。新島行きは3月下旬に設定したのでした。

その電話の時点では2ヶ月後のことだったのでしばらくはのんびりと連絡をとるくらい。
本格的に考え始めたのは3月に入ってから。

3月頭になり、ヤカンが仕事の休みを確定。
その直後、大型客船の予約をしたもののすでに復路の2等席は満席。

往路は2等、復路は特2等で予約。
春休み期間でもあるし「混んでるなぁ」くらいに思っていたのですが、あとでその理由を知ることになります。

出発が近づくにつれて、気になるのはやはり天気。
2週間ほど前から、天気予報と風予報を何度も見ていました。

最初は全日、雨予報。
それが曇りや晴れになったりと持ち直してきたことで、前日も行くつもりで仕事を片付けていたのでした。

そして当日、もう後2時間ほどで自宅を出発。
そんなところで、新島のレンタカー屋さんから電話がかかってきます。

「大時化みたいですが、明日は来る予定ですか?」
正直、最初に聞いた時は何を言っているのか理解ができず。

どうやら天気の見立てが甘かったようで、どうやら今夜から明日にかけて、つまり船に乗って新島に向かっている間、海が時化ているようなのです。
そしてこれまた知らなかったのですが、大型客船は島に接岸できない場合は引き返すことになる、とのこと。東京に戻るか、大島で降りるか……となる。

レンタカー屋さんの見立てでは接岸できる可能性は6割くらい、とのこと。

もう直前でもあるし船には乗ります、と答えて電話は終えたものの、まだ仕事が残っている時間帯で、しかもこちらはもう出発準備の最終盤。
頭の中が一気にざわつきます。

ヤカンに連絡し、妻にも少し相談。
行くか、やめるか。それとも日をずらすか。
気持ちはかなり揺れたものの、向かってみることに。

というのも、今回はもう後戻りしにくい状態なのです。

新島へ先送りしたキャンプ道具一式を部屋でまとめた様子

キャンプ道具一式は、すでに新島へ送ってある。
仕事もこの日程に合わせて数週間単位で調整してきた。

別案も一瞬よぎったけれど、この荷物と準備の量を考えると、気軽に行き先変更というわけにもいかず。

東海汽船の運航状況を確認すると、条件付きでの出航とのこと。
出航はするけれど、海や港の状況次第では接岸できないかもしれない、という状況。

新島に着けるかもしれない。
でも、着けずに引き返すことになるかもしれない。

旅の期待などこの時は薄れ、大きな不安を抱えたまま、自宅を出発しました。

竹芝へ向かう道中で、さらにひとつやらかす

車で高速を走り、竹芝ターミナルを目指します。

雨雲の下を竹芝へ向かって走る高速道路の車窓

どんよりとした天気の中、出発。
まず止むことは無さそうな雨模様の中、空に広がる雲のようにモヤッとした気持ちのまま向かいます。

雨の夜に濡れた路面を進み竹芝へ向かう首都高入口

徐々に暗くなって、夜に。
都会はキラキラと眩くて雨の日の首都高なんて見づらくて走りたくないものです。安全運転を心がけつつも、ヤカンと早く合流したい気持ちも湧いてきます。

20時頃、駐車場に到着。
少し落ち着いてスマホを充電しておこうとして、気付きます。

充電ケーブル一式、忘れちまった……。

調子悪くなっていたモバイルバッテリーをわざわざ今回のために買い替えたのに、ケーブルだけ見事なくらい丸ごと忘れてる。
バタバタと準備して飛び出してきたので、家での最後の準備が完全に抜け落ちていました。

スマホの充電ができないのは致命的……。
ヤカンが着くまでの間、慌ててコンビニへ。

ただでさえ船が着くかどうか怪しい日に、余計なタスクを増やしてしまった感じ。
なんとも落ち着かないまま、竹芝客船ターミナルへ向かうことに。

雨粒ににじむ光の中で見上げるマスト

ターミナル前に煌めくマストを目指して歩く。雨の中。

今回の手荷物は、ロッドケース、バックパック、クーラーボックス。
大物のキャンプ道具は送ってあるので、だいぶ抑えたけど、やっぱり重い。

強い風が吹き抜ける夜の竹芝客船ターミナル前

ターミナルではベンチで一息つき、ヤカンが着くまでの間に、チケットを発券し必要事項を記入。ついでに窓口で、「もし新島に着けなかった場合はどうなるのか」も確認してみます。

話を聞くと、大島を出たあと、それぞれの島で接岸を試みて、ダメなら次へ。
そして往路がダメでも復路でトライすることもあるが、今日の予報だと往路でダメだったら復路はトライせずに大島まで戻るのでは、とのこと。

新島で降りられない可能性はやはりある。
そうすると……新島で降りられなかったら、やはり大島で一泊するしかないかな。

受付の方は淡々と説明してくれるのですが、その冷静さがより現実味を増していきます。

複雑な気持ちになって悶々としているところで、ヤカンが合流。
頭にあったものバーッと話したら、不思議と頭の中のざわつきが整っていきます。

不安は消えない。
でも、旅がちゃんと始まりつつある感覚が、ここでようやく出てきました。

雨の竹芝から、さるびあ丸へ

22時出航なので、30分ほど前から乗船が始まります。

新島行きの乗船口を案内する竹芝客船ターミナルの看板

早く船に乗って落ち着きたいというソワソワした気持ちを抱えて列に並ぶ。
ここに来て船はどのくらい揺れるんだろう……という不安も出てきます。島に着くのかどうかばかりを考えて、そういったことに頭が働いていなかったことに気づく。

雨の竹芝で出航を待つさるびあ丸の船体

が、船を見ると一気に気持ちが動きます。
そういえば、3代目さるびあ丸に乗るのが楽しみだったのです。

前回乗った時には2代目で、乗った後すぐに3代目になったのでした。

ライトに照らされたさるびあ丸は、頼もしいようでいて、今日はどこか緊張感も感じる姿。
これに乗れば、いよいよ新島へ向かうのだなと実感します。
同時に、これに乗っても着けないかもしれない、という現実もまた重たくのしかかってくるわけですが。

3代目さるびあ丸の白い2等席が並ぶ船内

席を確認し、荷物を置いたらデッキへ。

青い照明に包まれた夜のデッキに集まる乗船客

乗船客は思っていたより多く、春休みらしい賑わいがあります。

船上から見た雨の竹芝と夜景

竹芝の灯りがゆっくり離れていく。
前回の新島行きでも同じ景色を見ているはずなのに、この日の気持ちはかなり違います。

あの時はただただ旅が始まる高揚感だったのに、今回はまだ不安の方が大きい。
本当に大丈夫だろうかと、頭のどこかでずっと考えています。

それでもここから、新島の旅がスタートしたのでした。

缶ビールとカップヌードルで、ようやく旅気分になる

一度船内をぐるっと見て回ります。

さるびあ丸の5階案内表示と船内設備のサイン

6年前に乗ったのは2代目さるびあ丸で、今回は3代目。
ずっと乗ってみたかった船です。

中はとてもきれいで、機能的。
明るさも動線も気持ちよくて、「今の船ってこうなんだな」と素直に感心します。
この船の体験記は、あとで別記事にしようと思います。

夕方前に軽く食べていたとはいえ、だんだんとお腹が空いてきます。
レストランは行列ができていたので、自販機で缶ビールとカップヌードルを買って、デッキ脇の立ち食いスペースへ。

缶ビールとカップヌードルを並べた出航後の簡単な夜食

ここ、なんだかんだ毎回好きなのです。
人混みから少し外れていて、海風を感じながらのんびりできる。

缶ビールで乾杯して旅の始まりを感じる手元

ヤカンと乾杯して、ビールをひと口。
不思議なもので、乾杯をした瞬間から不安よりもワクワクが勝ってくるんですよね。

さっきまであれだけ落ち着かなかったのに、ビールとカップ麺を腹に入れた途端に気分が切り替わるのがはっきりとわかるのです。

最近ほとんど酒を飲んでいなかったこともあって、すぐに効いてくるアルコール。
体の芯がじんわりゆるみ、会話も軽くなる。

ようやく「行けるところまで行ってみよう」という気持ちになれたのでした。
もう船に乗っちゃってるけど。

揺れる夜、眠れない椅子席、濡れたデッキ

食事を終え、歯を磨いて席へ戻ります。
往路は2等椅子席。

2等椅子席の足元に荷物を置いて休む船内の様子

ほろ酔いの勢いで寝られるかなと思ったのですが、これがなかなかうまくいかない。
体勢が決まらず、うとうとしては目が覚め、荷物を足元に置き直してはまた目を閉じる、の繰り返し。

快眠グッズを駆使するも、なかなかうまくいかない。

のび太君の如くどこでもすぐに寝れるヤカンも苦戦している様子。

揺れる夜にカーテン越しの暗さが残る船内

そうこうしているうちに、夜中から揺れがだんだん強くなっていきます。

トイレに行ってみるも、通路を歩くにも手すりがほしい。
体が左右に持っていかれる感じが、思っていたよりはっきりとある。
船酔いはなかったので良かったものの、穏やかな海ではないことは十分すぎるほど伝わってきます。

雨で濡れた早朝のデッキに青い照明が残る船上風景

途中で目が覚めたタイミングで、船内を少し歩いてみます。
デッキに出ると、雨と波しぶきで床がびしょびしょ。

空気はひんやりというより、もう冷たい。
潮と雨の匂いが一緒になって鼻に入ってきて、夜の海の厳しさをそのまま吸い込むようでした。

これは、なかなかだな。

島が近づいている感じより、むしろ遠のいている感じがしてしまう夜。
寝不足と揺れで、体もジワジワと削られていくようです。

大島、利島、そして新島へ近づく1時間

朝6時頃、大島に到着。

雨の大島港にゆっくり近づく船上からの眺め

スタッフの方に新島の様子を聞いてみても、やはり答えは「港の状態次第」。
やはり行ってみるしかないようです。

もしダメなら、戻ってきた時に大島で降りて一泊して、翌日またトライか。
そう腹をくくろうとするものの、実際にはそんなに簡単に割り切れません。

それでも、7時半頃に利島へ近づき、無事に接岸。
利島に着けるなら、新島も少しは望みがあるのではないか。
その事実だけで、張っていた気持ちが少しゆるみます。

朝の船内レストランで食べたやさしい味のカレー

ここでレストランへ。
朝食に選んだのは醍醐のカレー。
精進料理のノウハウから誕生したヴィーガンカレーということで、寝不足の胃にも入りやすい、やさしい味でホッとします。

温かいものを食べると、人はちゃんと回復するもので。
ようやく頭が働き始める感じがしました。

雨粒で白く曇る船窓の向こうにぼんやり見える海

ただ、利島から新島までの1時間が長い。
本当に長く感じます。

食べ終えて席に戻り、荷物をまとめて、すぐに降りられる状態にして待つ。
船内アナウンスや表示を、ヤカンと何度も確認する。
復路便やジェット便の欠航情報ばかり耳に入ってきて、不安はむしろ増していきます。

旅というより、ちょっとした祈りの時間。

着いた。その一言で、全部報われる

ディスプレイを眺めているうちに、新島が近づいてきます。

画面に映る新島接近中の航路案内

接岸できる時には、あの決まったメロディーと一緒に下船の案内が流れる。
それを知っているからこそ、そのアナウンスを待つ時間が妙に長く感じるのです。

どうだ。
どうだ。
頼む、着いてくれ。

そして、ついに……。

新島前浜港への到着を知らせる船内ディスプレイ

下船案内が船内に流れます。

「これって着くってことだよね?」
2人してすぐには信用できずに確認し合います。

着ける。

確信した瞬間、ヤカンと思わず握手。
大島で一泊でも仕方ないよね、なんて言葉にはしていたけれど、本音を言えば、新島で降りられなければかなり堪えたと思います。

だからもう、うれしいなんて一言では足りない。
ただただ、よかった。
本当に、よかった!

雨の新島港に接岸するさるびあ丸の船体

予定より遅れて、新島へ到着。
下船口へ向かい、荷物を持って外へ出ます。

雨と風はまだ残っている。
でも、想像していたよりは荒れていない。
足の裏で地面を感じた瞬間、ようやく体の緊張が解けます。

雨の新島港で下船後に歩く乗船客と濡れた通路

―― 着いただけで優勝。

ヤカンからのそんな言葉に激しく頷きながら待合センターへ向かいます。
この時点ではまだ何も始まっていないのに、もう旅の大半を乗り越えたような気持ち。

予約をしていたレンタカー屋、ナカダレンタカーさんに電話すると、ちょうど同じ船に乗っていたとのこと。
車を受け取る際に話をしていると、やっぱり、あの揺れはなかなかだったらしい。

新島で毎回借りる釣り用の軽バン

借りたのは、前回同様の釣り用バン。
新島に来るのはこれで3回目ですが、毎回この車にお世話になっています。

ロッドケースもクーラーも積みやすくて、島の釣り旅にはやっぱりこういう相棒がよく似合う。
ようやくここから新島での時間が始まる……と車に乗り込みます。

「着けたよー!」と車の中ではそればかり。
島に行くだけでそんなに……と思われるかもしれませんが、ここまでの準備や延期の難しさを考えると、今回の旅にかけた気持ちは相当なものだったのです。

本来は、旅くらい自由にできて当然ですし、こんな悩みなんて世の中から考えればきっとちっぽけなものなのですが。
当の本人達にしてみれば、相当なものなのです。

昨日の自分達に伝えたてやりたい。
ちゃんと島に着けたぞ、と。

今回みたいな「行くかやめるか」の判断って、もう少し情報がまとまっていれば気持ちが楽になる気がします。
そのあたり、うまく整理できないか少し考えてみようかと思います。

いずれにしてもここから、新島釣りキャンプの始まり。
荒天で釣りは無理そう、キャンプはできるのか……。続きはまた次の記事にて。

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